当初はもっといろいろなことを試みていたのですが、最終的に残ったのがPCとレールとレンガなんです。限られたコストの中で、この3つの点を大切にしてきました。つまり、この岩見沢複合駅舎は大事な部分だけがピュアに残った建物なんです。でも逆にそれが良かったのかもしれません。もっと予算があると余計な材料を使ったり、本質とはあまり関係ない操作をしたと思うのですが、節約できるところは節約して、大事なところだけに集中的にお金を投入したことで、とてもわかりやすい建物になった気がします。
屋根にPCを使用したのは駅を長く利用できる施設にするためでした。当初は壁も全てPCの提案でしたが、コストが厳しくて壁は現場打ちにせざるを得なくなりました。ただ、屋根には、大きな雪荷重が掛かり、それが風によって吹き溜まりができて偏荷重となる可能性もあります。とにかく耐久性が非常に大事なので、屋根だけはクラックが発生しにくいPCを使いたかったのです。
また、ここは鉄道の街ですから、サッシのマリオン(開口部を支える垂直の部材)には製造元や製造年が刻まれたレールを使っています。これがまた鉄道ファンの方の興味を引くようです。総数232本の30kg古レールは、JR北海道さんにお願いして集めてもらったものです。
レンガは、隣町の江別のレンガ工場で作りました。江別には鉄道延伸時にたくさんのレンガ工場がつくられました。RC技術が日本に入ってくる前の時代の鉄道建設には、耐火性のあるレンガという素材が使われ、実際に機関庫や工場、橋などにもレンガが使われていました。岩見沢の昔の駅舎は木造でしたが、その周りにある工場や機関庫はレンガ造でした。国力を増強しようという殖産興業の時代には駅舎よりも産業を支える施設の方が重要で、耐火性の高い建物にする必要があったのです。設計プロセスの中で、鉄道とレンガの深い関わりを歴史の中に見つけることができたので、この駅舎にレンガを使う決断しました。コンペの段階ではレンガの積み方についてはまだ考えていませんでした。北海道に何度も通う中で、サイロ等に使われている「小端空間積み」という積み方の表情を再現することにしました。屋内のレンガの箱は、この小端空間積みを応用して、一部を透かし積みにしました。このレンガの壁は空調域と非空調域の境界となっているので、透かし積みの穴に一枚一枚ガラスを入れています。23枚/uという膨大な数だったので大変な作業だったと思います。
はじめて岩見沢を訪れた時は、雪で一面真っ白で、街中にはほとんど人がいませんでした。写真を撮ってもまるで白黒写真のような世界です。だからこの駅では人の賑わい街にもたらすことと、冬に街を明るく真っ赤照らすということが、最初のイメージでした。ここはやはり雪深い冬のための駅なんですね。夜になると一面の真っ白な雪景色の中で、レンガの赤い色だけがぱあーっと見えるんです。冬の夜景は本当にきれいですね。そして、ようやく春を迎え、6月から8月頃になると新緑の季節で、美しい自然とレンガのコントラストがとても印象的な風景を見ることができます。 |